日本工営とグルーヴノーツ、ミャンマー・ヤンゴン市で量子コンピュータを活用して最適な都市交通と環境づくりに向けた「グリーンリカバリー促進事業」を開始|環境省「脱炭素社会実現のための都市間連携事業」に採択
2020年12月22日
日本工営株式会社
株式会社グルーヴノーツ
快適な都市サービスを創出する 「City as a Service」で、脱炭素社会の実現に貢献
日本工営株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:有元龍一、以下「日本工営」)は、環境省の「令和2年度 脱炭素社会実現のための都市間連携事業」*1に採択され、量子コンピュータ関連ビジネスを手掛ける株式会社グルーヴノーツ(本社:福岡県福岡市、代表取締役社長:最首英裕、以下「グルーヴノーツ」)ならびに福岡市(市長:髙島宗一郎、以下「福岡市」)をパートナーに、福岡市の姉妹都市であるミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」)ヤンゴン市において、量子コンピューティング技術*2等を活用した最適な都市交通と環境づくりに向けた「グリーンリカバリー*3促進事業」を開始いたしますので、お知らせいたします。
取り組みの狙い
日本工営は、国内最大の建設コンサルタント会社として、世界各国の社会資本整備を通じて、より快適なまちづくり・自然と共生する環境づくりを推進しています。
一方で、グルーヴノーツは、イジングマシンといわれる量子コンピューティング技術を活用した世界初の商用ソリューションとして、クラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS (マゼランブロックス)」の開発を行うテクノロジーカンパニーです。同社では、街を舞台にビッグデータやAI、量子コンピュータを駆使して快適で豊かな都市サービスを創出する「City as a Service(シティ・アズ・ア・サービス、CaaS)」を推進しています。
このたび、日本工営はグルーヴノーツの「City as a Service」に賛同し、両社が培ってきた技術やノウハウを共有し、連携していくことで、国際社会において極めて重要な課題である脱炭素社会の実現に貢献します。その取り組みとして、ミャンマー・ヤンゴン市で廃棄物分野のODA事業にも取り組んでいる福岡市による検討内容への助言や現地活動への支援のもと、ヤンゴン市でCO2排出量削減に貢献し、最適な都市交通と環境づくりに向けた「グリーンリカバリー促進事業」に取り組みます。
グリーンリカバリー促進事業について
新興国は、急速な人口増加や都市化によって目まぐるしい経済成長をみせる一方で、交通渋滞や廃棄物処理など社会基盤インフラの整備が追いつかず、様々な環境問題が顕在化しています。特にミャンマーは、経済成長率が6%台とアジア諸国の中でも高い伸びを示しています。その反面、例えば、中心地であるヤンゴン市の廃棄物収集量は、2011年からの5年間で1.7倍に増加して約85万トンを超えるなど年々増加を続ける中で、廃棄物収集運搬業務に非効率さが生じ、深刻な廃棄物問題に直面しています。
日本工営とグルーヴノーツが取り組む、最適な都市交通と環境づくりに向けた「グリーンリカバリー促進事業」では、施策の一つとして、こうした廃棄物管理問題に対し、安全性・エネルギー効率・社会環境保全を視野に入れながら、都市レベルの廃棄物戦略の策定、および量子コンピューティング技術やAI技術を活用して収集運搬システムの整備を目指します。
グルーヴノーツが提供する「MAGELLAN BLOCKS」は、量子コンピューティング技術の中で「イジングマシン」(または、量子アニーリング)といわれる新技術を搭載しています。これは、物理法則の原理を利用して、条件をすべて満たした上で対象が最も大きくなる・小さくなる答えを高速に導き出すことに長けた計算技術です。
例えば、廃棄物収集運搬業務においては、「収集作業員数を増やさず、規定の労働時間も超過させずに、一日の収集量を増やしたい」「すべての収集車の積載率を最大化して、遠い処分場までの往復回数を少なくしたい」「回収が必要なオフィスビルだけを最短ルートで回りたい」といった課題が挙げられます。しかし、こうした課題を解決するための業務計画を作成しようにも、考慮すべき条件が複雑すぎて計算しきれず、適切な対処ができずにいました。「MAGELLAN BLOCKS」を活用することで、最も良いシフトや作業計画、運搬経路の作成等を容易かつ高速に行うことが可能になります。最適な人材配置、業務効率や運搬効率、生産性の向上の実現により、燃料消費、CO2の削減に繋げていきます。
グルーヴノーツが、海外で都市活動の最適化に取り組むのは今回が初めてとなります。海外での業務経験とネットワークが豊富な日本工営の支援の下、グルーヴノーツは、今後、最適な都市交通と環境づくりに向けた「グリーンリカバリー促進事業」においてさまざまな施策の検討・推進を図り、ミャンマーのスマートシティ化や産業の発展に寄与してまいります。また、他都市や他分野においても、強固な協力関係を構築しながら、さまざまな社会課題の解決に向けた取り組みを展開し、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。
福岡市 髙島宗一郎市長のコメント
「福岡発のサービス・技術を使って、都市全体の最適化を図り、ヤンゴンの方々の課題解決につなげることは非常に誇らしいことです。特にグルーヴノーツは、福岡を代表するスタートアップで、量子コンピュータの商用ソリューション化という他にはないサービスを展開し、多くの成果を出していると思います。次に続くスタートアップのチャレンジャーたちにとっても大きな後押しになるでしょう。福岡市として、本プロジェクトをしっかりとサポートし、一緒に成功させることができればと思っています。」
注釈
*1)環境省では、日本の自治体や民間企業が有する脱炭素・低炭素社会形成に関わるノウハウや技術サービスを活用して、開発途上国の都市における脱炭素化を推進するための「脱炭素社会実現のための都市間連携事業」を実施しています。
http://www.env.go.jp/press/108000.html(令和2年度一次公募採択結果)
https://www.env.go.jp/press/108444.html(令和2年度二次公募採択結果)
本件は、「ヤンゴン市におけるAI及びZEB技術導入によるグリーンリカバリー促進事業」の事業提案者である日本工営と、共同応募者の福岡市およびグルーヴノーツの他、AEON MALL SHWE TAUNG Co. Ltd,、三菱パワー株式会社、三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社が参画しています。
また、日本工営は、環境省の同スキームで、本年度は下記の6事業も実施しております。
- 大阪市「ホーチミン市における産業・公共セクターのゼロエミッション促進事業」
- 大阪市「タイランド4.0実現に向けた脱炭素社会形成支援業務」
- 富山市「サンティアゴ市レンカ区におけるSDGs未来都市推進事業」
- 川崎市「川崎市・ジャカルタ特別州による脱炭素社会の実現を目指したグリーンイノベーション推進事業」
- 川崎市「ヤンゴン市における持続可能な都市形成に向けた脱炭素化推進事業」
- 川崎市「リアウ州地域におけるパーム油産業を軸とした環境調和型経済社会及び2050年ゼロカーボンシティ形成支援事業」
*2)量子コンピュータは、従来のコンピュータ(古典コンピュータ)のように“0”または“1”で情報を処理するのではなく、物理法則である「量子力学」を原理に量子という目に見えない物質の動作を応用し、そこに計算式を当てはめることで、高速処理を実現します。量子コンピュータには、アニーリング方式とゲート方式があります。アニーリング方式は、膨大な組み合わせパターンの中から最適な組み合わせを探索することに特化し、「組合せ最適化」問題を高速かつ高精度に解くことができます。計算性能の向上において技術的な実現可能性が不十分な量子ゲート方式に比べ、すでに高い性能を持ち先行するアニーリング方式は実用化に適しているといわれています。
*3)「グリーンリカバリー(緑の復興)」とは、環境問題に重点を置き、持続可能な社会の再構築を目指す新型コロナ禍からの復興計画で、EC加盟国やカナダをはじめ世界で取り組みが進んでいます。
※本プレスリリースは、日本工営株式会社と株式会社グルーヴノーツの共同リリースです。