竹富島 の環境、伝統文化もSDGs活動に寄与する取組み
日本の最南端の町にある 周囲約9k㎡、海に囲まれた小さな島・ 竹富島 の自然と伝統文化を守るために、この島にある滞在型リゾート施設「星のや竹富島」と、島の自然環境保全に取り組む「竹富島地域自然資産財団」がパートナーシップ協定を結びました。海洋プラスチックや漂着ごみの問題、途絶えてしまった伝統作物の復興などの活動に協働して取り組む内容です。この取り組みは、SDGsの「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」および、「8.働きがいも経済成長も」、「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11.住み続けられるまちづくりを」、「12.つくる責任つかう責任」、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に寄与する活動だと考えます。
海洋漂着ごみを集める活動
パートナーシップ協定締結の背景
竹富島の周囲には日本国内最大の珊瑚礁海域である「石西礁湖 せきせいしょうこ 」があり、透明度の高い美しい海が広がっています。島内には国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定される集落があり、伝統的な琉球赤瓦屋根の木造民家が建ち並びます。このように竹富島に豊かな自然環境と伝統文化が数多く残っているのは、島の方々が竹富島憲章*1に基づき守り続けてきたことに加え、協同一致の精神「ウツグミの精神」で島を生かす心を大切にしてきたためです。
しかし、島の主産業が農業から観光業へと移行していく過程で、土地の利用変化や開発の危機、入島者が増えたことによるごみ処理問題や排水処理問題など、自然環境保全における問題を抱えるようになりました。*2これらの問題を解決するべく、入島料や寄付金を原資とした組織である財団が発足しました。
星のや竹富島は、地域文化を尊重し、島と共存共栄を目指しています。伝統作物の継承に取り組むなど、島の伝統を大切にして運営しています。星のや竹富島と財団が双方の特性を理解し合い協働し保全活動を展開していくことで、島の貴重な資産を後世に繋ぎ続けることができると考え、本協定の締結に至りました。
*1. 1986年に制定された、土地保全の優先が示されている基本理念。
*2. 参考:「一般財団法人 竹富島地域自然資産財団 活動紹介」
竹富島を守るための3つの協働の取り組み
財団は自然環境保全活動を3項目24活動に分類し、「アピール24」として取り纏めています。財団と星のや竹富島は、この内容を参考に以下の3つに取り組みます。
1. 島の海洋漂着ごみ問題の解決に向けたアクティビティ開発
エコツーリズムの一環として、財団が環境保全を基本としたツアーを開発しました。このツアーは、ビーチクリーンやガイドによる島文化のお話、回収した海洋プラスチックごみを特殊な機械を用いてウミガメのキーホルダーに加工するリサイクル体験で構成されます。ツアー参加者と島のどちらにとっても魅力あるツアーとして安定的に運営ができるよう、星のや竹富島のスタッフが財団によるガイド養成教育を受け、「まいふなー*3ツアー」の名称で星のや竹富島の宿泊者へ提供します。
海洋プラスチックやペットボトルなどが漂着
ビーチクリーン活動を行いながら神話や環境の話を聴く
少人数での実践を経て、参加者からの感想を内容に反映させていく計画です。更新した内容を財団に共有することで、財団が養成した島民ガイドの元でもツアーが提供できるように取り組みます。開発から運営のノウハウの共有まで協働して完成したまいふなーツアーをきっかけに、魅力的な環境保全ツアーを竹富島に定着させることが目標です。
*3竹富島の方言で「お利口さん」という意味
2. 島全体での伝統作物の復興
自給自足の生活を営んでいた竹富島では、農業は島の文化や歴史の根本です。しかし観光業や流通の発展と共に、暮らしに密接に関わっていた畑文化が失われつつあり、島には耕作放棄地が点在しています。600年以上の歴史があるとされる種子取祭(タナドゥイ)の祭事食「イイヤチ」は、かつては島で栽培された粟を使用していましたが、現在では島外から調達した材料で作られるようになりました。
伝統的な畑文化を学ぶ
イイヤチをアレンジしたおやつ
星のや竹富島では2017年より、島の伝統的な畑文化や農作物を継承する「畑プロジェクト」を実施しています。とくに、供物として重宝される粟の栽培に力を入れ、2018年には収穫した粟を竹富島に奉納しました。この活動は、星のや竹富島が独自におこなってきた活動です。今後は伝統作物を継承するため島全体で粟づくり復興を目標におき、将来的には持続的な竹富島産の粟でイイヤチづくりを実現したいと考えています。財団の協力のもと、財団と星のや竹富島で島にある耕作放棄地を活用・管理し、島の土地を生かしながら粟作面積を広げていきます。
3. 伝統作物の特産化を目指す技術協力
竹富島産の粟に経済的価値を生み出すため、粟を使用した新たな特産加工品の開発を検討しています。まずは竹富島の農業や粟について深く知り、特産化を目指すうえで基本となる知識を得るため、島に住む長老や農業に造詣がある方を招いて勉強会を開催しました。知識を学んだあとは、2021年2月に星のや竹富島の畑へ竹富島産の粟を作付けしました。収穫した粟は新たな加工品にするため、財団と技術協力をおこないます。
竹富島産の粟に新たな経済的価値を生み出すことで、島の伝統作物が失われることがなく継承されるよう活動していきます。
粟が使われた奉納芸能
農業に造詣がある方を招いて勉強会
関係者のコメント
竹富島地域自然資産財団
2020年、世界規模に拡大した新型コロナウイルス感染症は、日本最南端の小さな竹富島にも多大なる影響をもたらしました。2019年5月に発足し、依然よちよち歩きの私たちの活動は、入域観光客激減による協力金の減収や三密を避けるための活動自粛により、年初に計画していた多くの保全活動を諦めざるをえない憂き目に直面していました。
しかし、この逆境のなか、星のや竹富島とパートナーシップを結ぶことにより、共に地域における自然環境と伝統文化の保全活動を行えることになりました。この協定により竹富島を SDGs 先進地域としてさらに飛躍させ、次世代へバトンを繋ぐための大きな一歩を踏み出せることを確信しています。
上勢頭 (うえせど) 篤 (あつし) 氏
星のや竹富島
2012年6月に星のや竹富島は誕生しました。運営開始に至るまで竹富島にお住いの皆さまには多大なるご協力をいただきました。その後も皆さまのご支援があったからこそ、今も運営を続けることができております。地域と共生するリゾートとして、持続的に施設だけを運営するだけではなく、地域に対してもしっかりと責任を持つ必要があると考えております。
今回竹富島地域自然資産財団とパートナーシップ協定を結ぶことで、お互いの強みを活かしながら社会的価値と経済的価値の両立を目指し、100年後も200年後も関わる皆さまが幸せになれるよう進めてまいります。
総支配人 本多 薫氏
竹富島地域自然資産財団と星のや竹富島の活動歴
一般財団法人 竹富島地域自然資産財団と星のや竹富島は、2020年10月より月1回の定例会議を開催し、毎月の活動進捗を共有しています。
2020年
10月7日 | 第1回 定例会議 竹富島の自然環境保全について目線合わせ |
10月29日 | 沖縄ツーリズムEXPOにて「パートナーシップ協定」締結予定の公表 |
11月5日 | 第2回 定例会議 海洋教育ツアー素案の検討 |
12月8日 | 第3回 定例会議 伝統手法の粟栽培について相談 |
12月22日 | 粟の勉強会 |
2021年
1月7日 | 第4回 定例会議 海洋教育ツアーの内容精査 |
1月25日 | 星のや竹富島の畑へ竹富島産の粟など作付け |
小さな離島から SDGs 先進地域としての貢献
竹富島の自然環境と伝統文化は、島の方々が大切に守り続けてきた、後世へ引き継ぐべき貴重な財産です。近年、持続可能な開発目標 (SDGs) の重要性がますます高まる中で、小さな離島に残る豊かな財産を後世に繋ぎ続けることは、この島で運営をする企業として積極的に取り組むべき活動であると考えています。
財団との協働活動を通して、SDGs目標の「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」を促進し、SDGs 先進地域として貢献できるよう活動を進めていきます。